ケントが小学校3年生くらいの時だった。
そのときは神戸に住んでいた。
学校から帰って来たので「おかえりー」と声をかけると「おかえり、言わんといて~~!!」と言ってひどく怒り始めた。
つまり、私の「おかえり~」の一言でパニックになったわけだ。
その頃は発達障害だということは分かっていなかったが、なんか学校で辛いことがあって、私の「おかえりー」で何かがいつペンに吹き出したように感じた。

私が「おかえり」さえ言わなければ、「おかえり、言わんといて~」と怒ることはないのだろうと思い、ケントには「おかえり」を言うのをその日からやめた。
ついでに、その後のことを書くと、ケントが高校生の時に、「ただいま~」と言って帰って来たので「おかえり~」と言って迎えた。それから「おかえり」を言っても大丈夫になった。
ケントに対しては7年ぶりくらいの「おかえりー」だった。

パニックを起こすのには必ず理由がある。
でも明確な原因がなくても、ストレスがたまっていたり、疲れていたりすると、ちょっとしたきっかけで爆発したりする。
だから、私の「おかえりー」だって、特にひどいことを言ったわけではない。
「なんで、こんなことで怒るの?」ということはよくある。
つまり、背景がどうだったかってことだ。
おとなはこのところ疲れているなとか、会社で嫌なことがあって、イライラしてるって自覚がある。
でも幼い子どもは、そういう自分の状態を把握しにくい。
なんか不快で機嫌が悪い。

思春期はそれに加えて、ホルモンのバランスがとれていないから、なおさらイライラする。
そういうときに、ちょっと注意されただけで、それが引き金になってぶち切れる。
その矛先はだいたい母親に向けられるからたまったものではない。
でも私の友人が教えてくれたこと。
「子どもは知っているんですよ。他の人にそういうことをぶつけたら嫌われてしまうって……でもママだけはどんな自分でも嫌いにならないで愛してくれるって分かっているんです。だから、甘えていろんなことをぶつけてくる。お母さんは世界一美しいゴミ箱。どんな汚いものも受け入れる。そして母なる大地はそういうゴミでも汚いものでも浄化します。母なる大地はすばらしい。そしてお母さんもすばらしい」
この話を聞いたとき、胸がいっばいになった。
どのお母さんも子どもにけっこうひどいことを言われていると思う。
もちろん、子どもにはそれぞれ性格があるから、次男はそういうことはいっさい言わない。
だけど、トルネードケントはエネルギーの塊。ひどいことも言われたし、壁に穴もあいたし、物も壊れた。
友人の話を聞いたとき、私はケントに信頼されていたんだと思うことができた。

ケントの彼女が教えてくれた。
「ケント君、お母さんのことをビッグマザーって言っていますよ」
大変過ぎたけど、頑張った甲斐があった\(^o^)/